23Jul
入れ歯安定剤は、総入れ歯の方が使用されている例がとても多いと思います。
最近ではテレビなどでもたくさん宣伝されていますし、一般的なドラッグストアでもたくさんの種類が販売されているので、気軽に入手されている方も多いでしょう。
ただ、補綴歯科医としては、入れ歯安定剤に頼り切りの日常生活になっているのだとすれば、正直なところ良い状態とは申し上げられません。
公益社団法人日本補綴歯科学会でも、「入れ歯安定剤の使用は自分で勝手に判断せず、まず歯科医の診断を受けるように」と警告しています。
ご高齢の方、もしくは体調が優れない方で、なかなか歯科医院までいらっしゃることが出来ない場合に、最寄りのドラッグストアでそうしたアイテムが入手出来る利便性を否定することも出来ないのかもしれません。
または、旅先で急に入れ歯に不調が出てしまったということもあり得るでしょう。
そんな時にほんの一時、状態を整えるために使用するのであれば、そうしたアイテムにも有用性があるかもしれません。
でもやはりそれは一時的な応急処置でしかなく、そうしなければ入れ歯が安定しないのにも関わらず、事実を棚上げしてしまってはいけないことだと申し上げざるを得ません。
入れ歯安定剤には、粘着性の高い材質で入れ歯を固定するというものと、痛みを軽減するためにクッションのような役目をするものとがあります。
特に問題を感じるのはクッションのようなもので、これは最悪の場合、骨の吸収が早まってしまいます。
入れ歯がズレるというのであれば、おそらくは歯茎が痩せて隙間が出来ている状態でしょうから、なるべく早く歯科医院にかかって欲しいのです。
ご自分の判断だけ、テレビのCMだけで入れ歯安定剤を使い続ける生活は、やはりいけませんね。
人の口の中は年々変化するもので、ある日突然のように思われるかもしれませんが、入れ歯が合わなくなるということは誰にでもあるのです。
そんな時に無理やり何か詰め物をして終わらせてしまうというのは、あまりにも口の中の状態をないがしろにし過ぎていることになります。
それで噛み合わせが改善するわけもなく、悪い方へ悪い方へ状態が変わって行くことに目を瞑ってしまうのは、とても悲しいことです。
いよいよ最後に歯科医院を訪れた時にはすっかり噛み合わせが悪くなっていて、治療に更なる時間とお金がかかるようになってしまっていたとしたら、ご本人のみならず、拝見した歯科医師もとても残念な気持ちになるのですから。
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